コミティアと好きな漫画と好きなことの話を聞くのが好きな話

5月5日に開催されたコミティア108というイベントに行ってきました、という、今から二ヶ月くらい前の話です。もうそんなに経ったのか…。コミティアに行くのは初めてだったんですが、会場に入った瞬間に感じた創作の熱気というか、まあ人が多いだけなんですけど、東京ビッグサイトに広がるブースを見て「うおー!コミティアー!」ってなったのを覚えています。

コミティアっていうのは、簡単に言うと同人誌の即売会で、描き手の人が直接読み手の人に自分の描いた同人誌を売る場所、野菜の直売所みたいなものですね。108は開催回数で、僕が行ったのは第108回コミティアっていうことです。歴史が長い。似たようなイベントにはコミケコミックマーケット)なんかがあったり。


「そもそも同人誌って何?」って認識の人もいると思います。というか、同人誌の文化に触れたことが無くて「同人誌って何?エロいやつ?」って思ってる人絶対にいますよね。違うわ!いやまあ確かにエロいのもあるけど!あるし、買うけど!エロ同人最高!!

でもそこで「違うの?じゃあ同人誌ってなに?」って言われると「えっと…なんだろ…」ってなってしまうんですけど、僕はぼんやりと、"同人誌"っていうのは"自費出版した本・漫画"のことだと思っています。自分で(業者に頼んで)印刷して本の形にすれば、それが即ち同人誌、みたいな。自分で印刷って言いましたけど、実際にコピー機で印刷した紙を束ねたものも同人誌として売られたり、無料で配られたりしてますし。

なので一言で"同人誌"と言っても内容も形態もバラバラで、笑えるものも、深く考えさせられるものも、また旅行記や写真集、レシピ本なんかもあって、そして中にはエロい本もあったりするわけです。エロってのは強烈なので、それが"同人誌"の認識にはみ出てきてるだけなんですよね、たぶん。

ただ、やっぱり同人誌には二次創作が圧倒的に多い。ちなみに二次創作というのは、既にある漫画やアニメなどのキャラクターを使い、新しいストーリーを個人が思い思いに独自に作ることです(だと思ってます)。そしてまたこの二次創作でめちゃめちゃ面白い漫画を描く人がいるんですよね…二次創作という文化は本当に凄いと思う。「すごいとおもう」って小学生みたいな感想しか書けない自分が悲しい。もっと色んな本読んで教養つけないとな…エロ同人ばっか読んでる場合じゃねえよ…。

とまあ、二次創作の話を出しましたけど、ここがコミティアが他の(コミケとかの)同人誌即売会とは異なる、コミティアたる所以なんですけど、コミティアで売ることのできる同人誌は二次創作じゃない、オリジナルのものだけなんですね。つまり描き手の人にとって、コミティアは『自分の創作を発表する場所』というわけです。僕たち読み手は描き手が今一番発表したい"生の創作"に直接触れることができる、描き手と読み手が直接交流することができる、そんな場所だと思います。好きな絵描きさんが温泉好きだということを初めて知ったし、その人の温泉エッセイ漫画はとても面白かった。人の好きなものの話を聞くのは本当に楽しい。温泉に行きたい。



顔も本名も知らない人と交流できるってのが、こういうイベントのいい所だと思いますね。僕は一方的に顔も本名も知ってる人と交流したんですけど。

ツイッターで知り合いだった親泊(オヤドマリって読みます)さん(@oyadomariyan)がコミティアで売り子をしてて、この人はairbagっていうバンドを組んでいるんですけど、「コミティアで会ったらairbagのデモ音源100枚渡すからな」とのことだったので、差し入れにコーラ(こういうイベントで売ってるコーラは高いけど、こういうイベントで飲むコーラはなぜか美味い)を買って、オヤドマリさんが売り子してるブースに行きました。

こう言ってますけど、実際は差し入れたコーラを掲げてめっちゃ笑顔で「楽しんでる〜!?」って言われたし、僕はエロ同人の入った袋を掲げて「楽しんでるぜ〜!」みたいなやりとりをしました。選挙権パンチとはなんだったのか。

airbag - Right here, right now. - YouTube

これは貰ったデモ音源の中で僕が一番好きな曲です。めちゃくちゃカッコいいな…。airbagの音楽は一言で言うなら"重厚で繊細"という感じで、洋楽的というか、今の日本に足りない"静と動"を持ったバンドだと思う。全然音楽に詳しくないのにそれっぽく「洋楽的」とか言っちゃったけど。まあ百聞は一見に如かずと言いますし、airbagの主催ライブが下北沢で6/27にあるので、少しでも興味を持った人はライブに行こう!ってブログに書こうとしてたんですけど、書こうと思ってたらもう6/27になってました。俺の日付感覚は死んでしまった。次もライブあると思うのでその時はぜひ。airbagの音源はここで聴くことができるらしいです→airbag


話はコミティアに戻ります。僕がコミティアに行った大きな目的の一つに、panpanyaさんのブースに行くというのがありました。

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このポスターを描いているのがpanpanyaさんです。僕はこの人の漫画がめちゃくちゃ好きなんですよね。今回panpanyaさんもブースを出展してるとのことだったので、単行本を持ってブースに行き「サインってお願いできますか…?」と恐る恐る訊ねたところ「いいですよ」と快く引き受けてくれました。

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思い返してみると、これがコミティアで一番嬉しかった。「いいですよ」と言われたとき絶対にニヤニヤしてたと思う。サインを書いて貰ってる間のちょっとした雑談で、作品を作る上での裏話なんかも聞くことができて、改めて「コミティアっていいな…」って思っていました。コミティアっていいな…。

僕がサインを頂いたこの本は「蟹に誘われて」という短編集で、これ本当に面白いです。

蟹に誘われて

さっきもポスター貼りましたけど、緻密に描き込まれた背景にくっきり浮かび上がって佇む素朴で皮肉的で優しい登場人物(+α(犬とか))が織り成す世界観の雰囲気がとてもいい。この独特な世界観にハマる人はとことんハマると思います。当たり前だと思っていた日常の世界の中に突然現れる非日常な世界を見たとき心に浮かぶ、知らない住宅街に迷い込んだ時のような感覚だったり、不思議な夢を見ているような感覚だったり、どこか懐かしいような感覚だったり。そして、そんな非日常な世界からきちんと元の世界に連れて帰ってくれて、読了後には心地よい余韻と、少し寂しいような気持ちになります。これは前にツイッターでも言いましたけど、僕が一番好きなのは「魚の話」という喋る魚の話で、4ページと短いんですけど、ハッとするようなシニカルなオチに思わずフフッと笑ってしまいます。同じく「足摺り水族館」という短編集も面白いのでオススメです。なんだかどこからか得てきた表現を切り貼りしたような感想になってしまうな…これはもう本を読むしかない。エロ同人を捨てよ、本を読もう(絶対に捨てません)。

panpanyaさんのブース(panpanyaさんは今回は同人誌ではなく、無料でブックカバーを配っていました)の他にも色んな人のブースに行って同人誌を買ったんですけど、そのたびに「作品すごく好きです!」「応援してます!」などと一方的に言って逃げてきました。さっき描き手と読み手の交流〜とか言いましたけど、感想を一方的に投げつけるこれは果たして交流と言えるのか。僕は交流が下手クソだ。でも普段応援してる人に「応援してます!」と言えたのはよかったと思う。


なんだか説明書みたいな長文になってしまいましたけど、つまり何が言いたいかというと、コミティアめちゃめちゃ楽しかったです。今回は巡るサークルを事前に調べてなくて当日バタバタしてしまったので、次行った時はゆっくり巡りたいですね。そろそろ温泉に行く予定を立てようと思う。